京阪大津線・車両解説

 京阪大津線は1997年の地下鉄東西線開業にあわせて、架線電圧を従来の600Vから、地下鉄対応の1500Vに昇圧しました。そのため、東西線開業後は在籍車両の半分以上が入れ替わりました。ここでは、現在も大津線で活躍する800系、600形、700形の3系列と、部分廃止前の京津線の顔とも言える80形電車を紹介します。

800系

800系イラスト

 800系は京津線用の車両で、4両編成を組みます。1997年の地下鉄東西線開業に伴い、登場しました。基本的に路面電車よりは地下鉄用の設計を採用した電車という感じです。京阪本線用の7200系、9000系を小型にしたような車体で、両端の2両は9000系と同じ固定クロスシートが1-2の配列で設置されています。中間車2両はロングシートです。京阪はグリーン濃淡塗装でしたが、800系はライトグレーに水色とオレンジ色を配した新塗装となっています。京津線の逢坂越えの急勾配、地下鉄線内の運用を考慮して全電動車となっています。4両編成で全長64mにおよび、浜大津−上栄町間の併用軌道に乗り入れます。現在のところ、日本の路面電車の中で最長編成となっています(なお、本来軌道法では車長30mまでしか認可されませんが、京阪800系は滋賀県警の認可を受けて、特例として倍以上の電車を運転しているのです)。京都市役所前−浜大津間系統専用に使用され、石山坂本線の列車には入りません(近江神宮前の工場への回送は走ります)。現在、4両編成8本32両が在籍しています。

600形

600形イラスト

 1984年に登場した、京阪大津線初の冷房車。登場時は、京津線の準急列車(三条−浜大津間)中心に運用されていましたが、1997年の地下鉄東西線開業後は石山坂本線専用になりました。1997年の大津線の架線電圧1500V昇圧に合わせて、全車1500V対応改造を受けました。2両編成を組み、前面は京阪本線6000系に似た近代的なスタイルですが、車体自体は1960年代に作られた300形、260系形流用です。前面のデザインが、1984年登場の前期型と1986年以降に登場した後期型では異なっています。上のイラストは、前期型の電車です。現在2連10本の20両が在籍しています。

700形

700型イラスト

 大津線の架線電圧1500V昇圧に対応するために1992年に登場した車両。1500V昇圧に対応できなかった350形、500形の車体を流用して生まれました。前面の形態と、屋根上の冷房装置の形が違う以外は、性能も機器類も600形と同じです。600形と同じく2連を組み、現在は石山坂本線専用で運行されます。2連4本8両が在籍し、中には琵琶湖の環境保全をアピールする特別塗装になっている電車もあります。

80形

80形イラスト60'
 ポール集電、単行時代(1961-1970)
80形イラスト70'~80'
 パンタ化、非冷房2連時代(1970-1989)
80形イラスト90'
 冷房化時代(1989-1997)

 80形は地下鉄開業前の京津線の各駅停車として使われていた車両です。1997年に廃線となった区間の東山三条、蹴上、日ノ岡の3駅は路面区間にある駅で、道路上から乗り降りする必要がありました。そのため、80形はこの3駅の乗降に対応するため、ドアに折りたたみ式のステップを装備しています。1961年に最初の車両が作られ、1997年の京津線部分廃止までずっと京津線の各駅停車として活躍しました。車体は、丸みを帯びた優美で軽快なユーロピアンスタイルで、当時ドイツのトラム近代化第1号として登場したデュワグカーに通じるデザインです。東山、逢坂山越えの急勾配(1997年に廃止になったJR信越本線の碓氷峠と同じ66.7‰)に対応するため、かなりのパワーを持った電車です。
 1961年から1970年にかけて近畿車輛で16両が作られました。80形電車が登場した1960年代は大津線はトロリーポールを使用しており、1970年にパンタグラフに切り替わりました。登場時は両運転台で1両でとことこ走っていましたが、乗客が増えたために1970年のパンタグラフ化にあわせて2両固定編成に改造されました。車体構造の関係で80形は冷房化が難しく、ながらく非冷房で暑い京都の夏にはつらいものがありました。しかし、技術が進歩して小型の冷房装置が開発されたために、1989年に80形も冷房改造されました。この時に、屋根の強度を上げるために屋根がかさ上げされ、やや重苦しいスタイルになりました。
 1997年の京津線部分廃止によって80形は働き場を失い、1500V昇圧にも対応できなかったために廃車となりました。優秀な車両でしたので、他の路面電車事業者への譲渡も検討されましたが、残念ながらまとまらず、ほとんどの車両が解体されました。現在、82号車がNPO法人京津文化フォーラム80によって保存されています。普段は錦織車庫(近江神宮前駅に隣接)で保管されており、イベント時などに公開されます。


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2004年4月4日ページ作成
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京阪大津線路線図(京都市交通局を含む)
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アルバム 2(部分廃止前の京津線)
アルバム 3(部分廃止前の京津線)
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